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Nostrasia

11月1日から3日にかけてNostrのアンカンファレンスが行われた。3月ごろ同様にコスタリカでNostricaというアンカンファレンスが行われたが、終わった直後に「じゃあこの次はどこでやろうか?」という話がすぐに持ち上がり、日本が候補地となった。その後紆余曲折あって香港と東京で同時開催と相成り「Nostrasia」が正式に決定した。

今回このイベントに参加したのは、1番の理由はこの半年間で最も深くコミットしたコミュニティだったからだ。2月にNostrを知り、日本・海外含めて非常に多くの人と交友を持ったので、これを機会に1度は会っておくべきと思った。後は不純な動機として、振る舞われる食事がジャック・ドーシーの奢りだったからというものもある。

結論から言えば、単なる聴衆の1人だった私としても、非常に刺激的でここ10年は味わったことない高揚を感じた。セッションでは新しい考えをたくさん聞けたし、多くの人と対話するのも純粋に楽しかった。3日間の内容を簡単に振り返りつつそこで考えたことを書き記していこうと思う。

Day 1

1日目は結局懇親会しかリアルタイム参加できなかったのもあって、ぶっちゃけその印象しかない。ただきっちり1日参加した人もそういう感想になってしまうかもしれない。

躍動感あふれるマグロ解体

マグロ解体(済み)

マグロが解体された🍣。「ショーとしてパッケージングされてるんだー」とか、「あーやっぱりでかいなー」とか、そういう感想をぐるぐるとかき混ぜながら、解体専用BGMに乗せてマグロが解体された。その後はなぜかカラオケ大会が始まったりして、Welcome Partyとしては完璧な内容だった。

Nostr in Japanese Communities - YouTube

ただ、こんなことばっかり話していてもどうしようもないので。この日のセッションでひとつピックアップするとしたら、やはり日本人の登壇だろうか。日本においてどんなNostrはどのように使われていて、どういうところが気に入っているか、そういう内容だった(是非、アップロードされている動画をチェックしてほしい)。

特に、エアリプについては以前から関心を持って見られているようだ。エアリプとは、マイクロブログにおいて当該の投稿に直接リプライせず、独り言のように言及する行為のことである。まったく日本語圏以外で見られないわけではないが、それなりに珍しい行為らしい。言うなれば日本人はマイクロブログをチャットルームのように使いがちということだ。

よく考えてみるとこれは全くスレッドが分割されていない2ちゃんねるのようなもので、はたから見ると狂気だろう。空を掴むようなタイムラインに、息を吐くが如く投稿をしていく、これが日本人のスタイルである。

これが良いことなのか悪いことなのかが肝要だが、私はそれほど悪いことではないと思う。シャイな人にとって何か意見を表明するのに直接リプライをするというのはハードルの高い行為で、「あくまでも独り言として喋るけど、あわよくば伝わってほしい」その微妙な機微を表現できる。Shitpostの山で大事な投稿を見失ったり文脈が混線して拗れたりすることはままあるが、これらはきっと技術的な解決が可能だと考えているので、基本的にはエアリプ仕草には肯定的だ。

海外NostrユーザーはBlueskyへの敵対心がちょっと強い(?)

話が前後するが、Welcome Partyではついに海外のNostrユーザーと対面できた。といっても普段からそんなに多く交流しているわけでもなかったが、ほとんど地球の裏側に住んでいる我々がインターネットで偶然知り合い、そして実際に対面しこうして喋っているというのはやはり感慨深いものだ。それから、感謝すべきは機械翻訳の存在だ。これのおかげで本当に多くのことを伝えられた。言語の壁を超えて意思疎通できるというのは尊い。

Day 2

2日目はうってかわって、比較的真面目に話を聞いていた。

Edward Snowden and Jack Dorsey on Nostr - YouTube

この日のハイライトはJack DorseyとEdward Snowdenの対談だろうか。Snowden氏は現在ロシアに亡命中でありオンラインでの登壇となったが、私自身英語が不得意だったのと、非常に濃い話だったことで6割程度しか理解しきれていないが、とにかくNostrの耐検閲性へ的を絞った話だった。実はこの前のセッションがNostrのビットコイナーたちによる対談セッションだったのだが、なぜBitcoinとNostrでなければならないかを包括的にまとめた話だった。どちらもテクニカルではなく、思想が主題である。

先述したセッションに登場した「中央銀行によるシャドウバン」という考え方はとても面白かった。Twitter/Xは私たちを単にわかりやすくBANするだけでなく、気づかれないようにこっそりシャドウバンする。これと同じことが中央銀行によって行われている、というわけだ。私は修正資本主義を基本思想として置いているので、これら政府による市場コントロールは大前提として捉えているため真っ向から主張が対立するが、彼らリバタリアンは私たちが普段無意識下にある思い込みをえぐり、斬新な考え方を提示してくるので基本的には好意的に捉えている。

インターネットはかつて、完全に現実の「従」であった。このことがインターネットを自由な空間として定義したのだろう。権力者はその存在に目を向けることはほとんどなかったし、それで世界が変わると思っていたのはごく少数だったろう。しかし、今やインターネットを使わない生活など血眼になって探してもそうそう見つかるものではない(JRAの騎手はレース前にネット空間のないところに隔離されるらしいが)。ある種古典的なセリフだが、誰でも世界を変えられる。逆に言えば、権力者もまたそこに目をつけ、規制の網を張る。インターネットは今や全く自由な空間ではない、良くも悪くも。かつての自由なインターネットを取り戻そうとする活動の一端が、Nostrなのだろう。

サイバースペース独立宣言、サイファーパンク、この言葉に心当たりがある人は少ないだろう。これらの運動は、初期のインターネットを取り戻さんとするものである。手前味噌だが、この詳細について技術書典15に出品する「Hello Nostr! Yo Bluesky! 分散SNSの最前線」にて寄稿しているのでぜひ読んでいただきたい。

技術書典ポスター

Day 3

3日目は日本語話者による発表がいくつかあったが、その中で一つピックアップするならイラストレーターのawayukiさんによる登壇だろうか。awayukiさんは私たちと同じく日本語話者としてはかなり早い段階でNostrに触れ、のめり込んでいった方の一人である。特に海外のユーザーと多く交流し、その中でNostr上のサービスでコラボレーションが実現したり、Nostopusというマスコットキャラクターを生み出したりと精力的に活動されていた。今回のNostrasiaでは、特別にデザインされたTシャツやマグカップなどをBitcoinにより販売されていた。

awayukiさんほどではないが、私も2月にNostrに触れ、これまでにないほど多くの人と触れ合い、いろんなことを考え、そして小さいながらもいくつかの貢献をしている。何が私たちをこんなにもドライブさせているのだろう。なぜ何かをせずにはいられないのだろう。私は以前よりNostrを「永遠のハッカソン会場」だと呼んでいる。創世記のNostrは、多くの未完成で溢れており、非常に「隙の多い」プロダクトだ。私たちが手を加える余白がまだ大量に残っており、それはコンテンツ、決済システム、クライアント、サーバー、とにかく広範囲にわたる。

私は以前、これと似たようなものを見た覚えがある。Twitterだ。Twitterの公開APIという仕組みは、開発者にとってまさに天国だったのだろう。APIによりTwitterは単なる1ソーシャルメディアから、開発者のおもちゃへと進化した。Twitterは、完成しているのに永遠に完成しない、不思議なプロダクトだった。多くのクライアント、関連づけたサービス、bot、これらはTwitterを常に新鮮に保っていた。インターネットはトップダウンではなくボトムアップで大きくなる構造を持っている。だからTwitterはそれに倣い、成功した。

Nostrもまた、そうあるべきだ。常にプロダクトの余白を意識し、いじって、拡張して、時には壊す。完成されたものはそこが頂点となってしまい、進歩がなくてあとは堕ちるだけになってしまう。Nostrasiaでも登場した、良い言葉がある。"Keep Nostr weird"。Nostrは、誰も全く同じ方向を向いていないコンテンツクリエイター、シットポスター、デベロッパーが自由に拡張できる、インターネット史上最も混沌とした空間になる場所を望んでいるのかもしれない。

祭りのあと

Nostrasiaの閉幕後は、海外のNostrユーザーとともに居酒屋で打ち上げがあった。この3日間で普段ありえないほどの情報洪水で疲れ果てていたものの、これを逃したらもう何十年も会えないかもしれない人と繋がっておきたいと考え、参加することにした。拙い英語力ながらたくさんの方と話し合ったが、特に印象深かったのはDamusのデザインチームの一人がエルサルバドル出身の方だったことだ。エルサルバドルといえば世界で唯一Bitcoinを法定通貨として認めた国だったが、そんな国でのBitcoinの受け入れ方など、なかなか聞けないことをたくさん聞けた。その方によれば、やはりまだBitcoinはscam(詐欺)であるとの感覚は根強いそうだ。彼らが現実とのギャップをどのように克服していくのか、非常に楽しみだ。

Nostrichの皆さん、またどこかで会いましょう。See you!