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Nostr Advent Calendar 2023

Nostr Advent Calendar 2023、22日目の記事です。21日目はきりのさんのNostreamのパフォーマンス改善に取り組んだ話、23日目はOHASHI Hideyaさんです。

Nostr流行語大賞を作りたかったのですが、Python自体を触るのが久々すぎてどうにもなりませんでした。よってプランB、Nostrについてのエッセイです。

AIとNostrとBitcoin?

2023年、おそらく世間的に言えば生成AI元年に近い年だったと言えるでしょう。私自身そういう認識は1月からすでにありました。しかし2月に入ってNostrに出会い、どうしてもその思考は片隅に追いやられてしまいました。その熱も流石に少しは冷めてきて、冷静に考える暇ができました。どうせなら今年、同時にその根本思想にわずかに触れたBitcoinも絡めて、少し論じてみようかなと思いました。

AIは何を解放するか?

これから、AI、特に生成AIは何をしてくれるのでしょうか。私たちの生活を豊かにするのでしょうか、我々の雇用を永久に奪うのでしょうか。人によって様々な回答があるでしょうが、私は一つの回答として、「我々の著作権概念に対しての認識を一つ先に進める」という一風変わった回答を試みたいと思います。

あなたがインターネットの歴史に詳しいと自負するなら、金子勇という人物を知らないはずがないでしょう。P2Pによるファイル共有システムWinnyを作り、京都府警に著作権法違反幇助の疑いで逮捕され、無罪を勝ち取り、そして2013年7月6日に亡くなった、あの金子勇です。彼は2chにおいて「47氏」として活動していましたが、そこで非常に興味深い発言をしています。

206 名前:47 投稿日:02/04/30 22:41 ID:ExHEmZC0 main/1019230372.html#848
これを作り始めた理由は、Freenetの考え面白いと思ったけど、その設計じゃ使いもんにならんのでは?
もっといい設計あるんじゃないの?(つーかJavaはやめれ)と思ったのと、一月丸々かければ実際に作ってそれを
実証できそうだけど4月1日時点で暇だったというところですかね。

まぁ、そろそろ匿名性を実現できるファイル共有ソフトが出てきて現在の著作権に関する概念を
変えざるを得なくなるはず、あとは純粋に技術力の問題であって何れ誰かがその流れをブレイクさせる
だろうとは思ってたんで、だったら試しに自分でその流れを後押ししてみようってところでしょうか。

純粋に暇つぶしの腕試しです。

私なんてたいしたこと無くて、この程度作れる人は日本人でもかなりいるはずですが、実際に表に
ブツを出す人少ないんで、こういう方面でも日本人にがんばって欲しいというのもあります。
(https://winny.info/2ch/47.htmlより引用)

この発言を読み解くとしたら、「デジタルデータはこれまでの媒体と異なり、コピーを高速かつ容易に行える。このようなテクノロジーは著作権概念を変革し得る。それを早めただけだ。」というところでしょうか。

彼の予言は、近いうち結実するのではないかと考えています。デジタル技術の普及ももちろんですが、現在はAIによってそれがさらに加速していると捉えることができます。LoRAをご存知でしょうか?AIによる画像生成において「お手本」を使える技術です。倫理的には議論のある行為ですが、例えば特定のイラストレーターのイラスト集をLoRAで学習すると、その絵柄によく似た絵を生成することができます。絵柄のコピーは、これまで非常に限られた人たちが行えるものでした。しかし、AIはこれを大衆の手にばら撒きます。金子勇の予言と少し違うのは、これ自体を既存の著作権で規制することが難しいということでしょう。しかし、我々の価値観の変革を迫るという点では、同じです。

Nostrは何を解放するか?

Nostrは、のすかい本でも書きましたが、インターネットの本質に近いものだと考えています。詳細については過去の私に譲りますが、要約すれば「インターネットは、生まれてから現在まで常に言論の自由を求める方向へ進んでいる。そこに思想の裏付けもある。だから、自由を追い求めるNostrはインターネットの本質を追求するものだ」というところでしょうか。

自由なインターネットにおいて、著作権は何を意味するのでしょう。著作権を最も強く擁護できるシステムは国家です。サイバーリバタリアン (インターネットの自由を追い求める人たち) の中には、実は知的財産権が厳格的すぎると強く批判する者もいます。創作とは何かをコピーし、自分なりに改良する行為であり、そこに障害が発生することは、表現の自由・言論の自由にとって敵だ、というわけです。

Information wants to be free.

私は、AIの発展も、Nostr、ひいてはインターネットの発展も、いずれも人間の著作権についての考え方を改めさせるものだと考察してきました。どちらもデジタルデータで構成されたインターネットとAIを、強引に「サイバースペース」としてまとめましょう。サイバースペースは人間の著作権概念に大きく影響を与えるものです。これは、自由な表現・言論を得るために払うことになった代償です。

じゃあ、ビットコインって何なのよ?

2023年12月22日現在、1BTCは600万円を超えています。2023年にもなってこんな話をするのも少し恥ずかしいのですが、ビットコインってなんなのでしょうね。もう少し幅を広げて暗号通貨でもいいですが、ビットコインに絞りましょう。とりあえず、Bitcoin.orgを引きましょうか。

ビットコインは、中央当局や銀行を介さず、P2P技術を用いて運営されています。トランザクションやビットコインの発行管理は、ネットワークによって共同で実行されます。ビットコインはオープンソースです。つまり、ビットコインを所有し管理する者は存在せず、また、 誰もが参加できます。ビットコインには数多くのユニークな特徴があり、従来の決済システムを使用できなかった方々も、ユーザーになる事ができます。

過不足ない完璧な説明だと言えるでしょう。では言い方を少し変えて、ビットコインの時価総額は何を表すのでしょうか。

  • 電子マネーとしての柔軟性?
  • 改ざんへの耐久性?
  • 「みんなが買っているから」?
  • ただの投機対象?

おそらく、全て正解だと思います。ここまで多くの人が知っている通貨ですから、きっと時価総額には全て織り込み済みでしょう。私は「人々が耐検閲というインターネットの本質へ向かう意志の強さ」が、バブルが壊れても底値として残る、ビットコインにおける最も大きな価値指標の一つではないかと考えます。ビットコインが拡大し続けるということは、国家の擁護という縛りを捨ててでも自由を追い求めようとする、人間の意志の強さの表れではないか、そう考えます。